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■ 涙と希望の交差点に立つ青春群像劇

2019年公開の日本映画『ここにいる』は、若き鬼才監督・山田翔太が放つ音楽ドラマの傑作だ。
新人俳優ながら圧倒的存在感を見せた主演の桜庭ひかり、音楽プロデューサー役で渋さが光る大泉洋の共演が話題を呼び、第43回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した本作は、東京と沖縄を舞台にした“音楽の架け橋”が観る者の胸を打つ。

■ 離島から東京へ──歌で繋がる奇跡の物語

人口300人の沖縄・渡名喜島で生まれた少女・真央（桜庭ひかり）は、東京の音楽専門学校へ進学するために初めて島を出る。方言コンプレックスに苦しみながらも、出会った同級生たちと「無声音楽部」を結成し、言葉を超えた音楽表現を模索していく。物語の転機は、過酷なレコーディング現場で生まれた即興の琉球語ラップ「ここにいる」がSNSでバズり、彼女たちの歌声が津波被災地の復興ソングに採用されるシーンだ。

■ 楽曲に隠されたキャラクターの深層心理

主人公・真央の「歌う前の深呼吸」は演技指導の鬼才・宮本幸子が考案したオリジナル所作。方言を恥じる彼女が、音楽との出会いを通じて「言葉のリズムが宝物」だと気付くまでの過程が、微妙な表情の揺らぎで表現されている。
音楽プロデューサー役の大泉洋は、スタジオでのレコーディングシーンで即興アドリブを披露。楽譜を床に叩きつけ「いい音探してんじゃねぇ！お前の心臓の音を録れ！」と叫ぶ台詞は撮影現場で生まれた名言となった。

■ 共感を呼ぶ珠玉のシーンと名言

ラストシーンで沖縄の浜辺に立つ真央が歌う「ここにいる」は、実際に沖縄民謡の第一人者・照屋政栄さんが作曲したオリジナル楽曲。波の音と三線の響きが混ざり合う中、「歌は海を越えるけど、私はここにいる」という台詞が、故郷と夢の狭間で悩む現代人の共感を呼んでいる。
劇中で音楽教師が生徒に語りかける「完璧な音程より熱い息づかいを録音したい」という言葉は、SNS上で#あるがままの私 というタグと共に拡散された。

■ SNSで沸き立つ観客の声

「真央が東京のコンビニで沖縄そばを見つけて泣くシーン、地方出身者なら誰でも共感するわ…#ここにいるあるある」@mikan_yo
「大泉洋さんの『若者の音楽は傷のにおいがするんだよ』ってセリフ、何度聞いても鳥肌立つ。音楽作る人みんなに見てほしい」@sound_ogre
「専門学校の仲間と自主制作MVを作ってる最中に見つけた映画。ラストの浜辺シーンで思わずメンバーと手繋いじゃった」@umi_no_rec

■ 音楽が照らす「居場所」の真実

本作が問いかけるのは、デジタル時代における「居場所」の本質だ。方言ラップとエレクトロニカの融合シーンでは、伝統と革新の調和が美しい音楽シークエンスで表現される。
沖縄の精霊信仰と東京の電子音が交差するラストシーンは、現代人が忘れかけた「地に足のついた生き方」を想起させる。観終わった後、スマホの地図アプリを開きたくなること請け合いの、不思議な郷愁に満ちた作品だ。

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